Lesson 9-2 アルコールとカフェイン

寝酒は危険?

寝酒を飲むという方も多いでしょう。成人2万5000人を対象にして行なわれた全国調査によれば、週に1日以上、眠るためにアルコールを飲むと答えた人は、男性では48パーセントにのぼり、女性でも18パーセントという数字が出ました。

アルコールには脳の活動を抑制する効果があるため、短時間で大量に飲むと眠くなることが知られています。このように、お酒をいわば睡眠薬代わりに飲む習慣は古くから見られ、紀元前の文書にも記録が残っているほどです。

しかし、アルコールには睡眠薬としての「効能」以上に、危険な「副作用」が多いことが明らかになっています。

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眠りを妨げるアルコール

アルコールは、体内で素早く分解されてしまうため、脳活動の抑制効果、いわゆる入眠効果も、3時間程度で消失してしまいます。「そうはいっても眠れたんだから問題ないじゃないか」と思う方もいらっしゃるかもしれませんが、アルコールを寝酒として飲んだ場合、その反動として眠りが浅くなり、中途覚醒Lesson 7-7参照)が増えることが知られています。つまり,アルコールには寝つきを良くする効果もあるものの、睡眠全体から見ればむしろ眠りを妨げるものと言えるのです。

アルコールには、脳の活動を抑制するだけでなく、筋弛緩作用もあります。そのため、睡眠時無呼吸症候群(Lesson 7-3参照)を引き起こす確率が高くなります。

また、寝る前にアルコールを飲むと、レム睡眠が抑制されてノンレム睡眠が多く現れるようになります。ですがこれはあくまで初期の一時的なもので、中盤以降はその反動でレム睡眠状態が続きます。そのため全体としてみると眠りが浅くあまり良い睡眠状態とは言えません。

これも稀にであれば問題はありませんが、寝酒が習慣になると「この状態が正常」だと脳が判断し、その機能を少しずつ変形させていきます。ノンレム睡眠だけが一時的に多く現れる睡眠は不自然なもので、身体に負担をかけてしまうからです。

このようなとき、何かのはずみで寝酒を忘れたり中断したりすると、ノンレム睡眠に移行することなくレム睡眠が長時間に渡って現れ、そのほとんどは悪夢を伴います。「いままでは夢も見ないでグッスリ眠れていたのに、寝酒を辞めた途端に悪夢を見るようになった」。久しぶりの悪夢を見た人が、そう考えても無理はありません。結果、ますます睡眠を寝酒に頼るようになり、依存が形成されます。

正しく服用していれば、睡眠薬のほうがアルコールよりもはるかに安全で、睡眠の質も落としにくいと言われています。

カフェインとニコチン

アルコールとは対照的に、カフェインやニコチンは、睡眠を妨げるものとして,ある意味できちんと認知されています。

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タバコの覚醒作用は約1時間、コーヒーの覚醒時間は約3時間程度続きます。高齢者の場合は、作用がさらに長時間持続します。また、カフェインは、コーヒーほどではなくても、お茶やソフトドリンクにも含まれています。そのため、就寝時間から逆算して、コーヒーやお茶、タバコを控えることが、睡眠の質を高めます。

特に睡眠に不満がなかった人でも、禁煙をしたり、コーヒーの量を減らしたら、寝つきや目覚めが良くなった、睡眠の質が上がったことを実感できた、という報告があります。コーヒーやタバコを嗜んでいる方も、少し量を減らして試してみても良いのではないでしょうか。

Lesson 9-2 まとめ

  • アルコールには睡眠薬としての「効能」以上に、危険な「副作用」が多い。
  • 正しく服用していれば、睡眠薬のほうがアルコールよりも安全で睡眠の質も落としにくい。
  • 寝酒を飲むと眠りが浅くなり、中途覚醒が増える。また、筋弛緩作用もあるため、睡眠時無呼吸症候群の危険も高まる。
  • 習慣的な寝酒は不自然にノンレム睡眠を増やすため、反発してレム睡眠を増やすように脳機能が変形する。悪夢が増え、依存の危険が高まる。
  • カフェインやニコチンは睡眠を妨げる。
  • タバコの覚醒作用は約1時間、コーヒーの覚醒時間は約3時間程度(高齢者はそれ以上)続く。