Lesson 9-3 光とメラトニン

メラトニンを分泌させる

ヒトの生活リズムは、体内時計が刻む概日リズム(サーカディアン・リズム)に強い影響を受けていることは、Lesson 1-4Lesson 1-5で学びました。Lesson 1-4から、ヒトが眠気を感じるメカニズムについて、抜粋してみましょう。

視交叉上核は、一日の内のある時間になると、松果腺に、睡眠を促すメラトニンというホルモンの分泌を促します。メラトニンの分泌によって、脳は眠気や疲労感を覚えて、覚醒から睡眠への移行します。

視交叉上核が、脳のなかで体内時計の役割を果たしている部位でした。寝つきを良くするには、この体内時計を適切に調節して、メラトニンの分泌を促すことも重要です。

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起きたら日光を浴びる

メラトニンが分泌されるのは、起床から約15〜16時間後です。そのため、眠りに就きたい時刻から逆算して15〜16時間前に起きることが大切なのですが、ただ目を覚ますだけではなく、覚醒したことを、体内時計である視交叉上核に認識させないといけません。そうはいっても、難しいことではありません。体内時計を調節する方法を応用すれば良いのです。もう一度、Lesson 1-5から引用してみましょう。

目から入った光は、視覚情報を認識する脳の部位へと視神経を伝って送られます。しかしこのとき、それとは別の神経経路にも光の情報は入力され、視床下部を通過しています。視床下部には視交叉上核があるため、体内時計は無意識のうちに目から入った光の情報を受け取っているのです。

目に光が入れば、自動的に視交叉上核にもそれが伝わり、朝が来たこと=覚醒したことを認識します。つまり、起きたら日光を浴びるだけでいいのです。目が覚めて、少し眠気が残っていても、ほんの少し頑張って雨戸を開け、外の光を浴びましょう。そうするだけで、その夜の寝つきは格段に良くなるはずです。

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また、午前中に30分以上、日光を浴び続けていると、その夜のメラトニンの分泌が増えるという研究報告もあります。通勤時やちょっとした休憩時間にも、なるべく日に当たるように心がけてみましょう。

ブルーライトの危うさ

目に光が入ると、体内時計は朝が来たことを知り、実際の生活リズムと概日リズムのズレを補正します。このことは、寝つきを良くするために大切なことをもうひとつ示してくれています。それは、眠りに就く前は、強い光を浴びないほうが良いということです。

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LEDを使用した機器の普及に伴って、ブルーライトが人体に与える影響が問題になってきています。ブルーライトは、可視光線のなかでもっとも波長が短く強い光です。目に入ると、角膜や水晶体では吸収・屈折されずに、網膜まで届いてしまいます。太陽を直接見ると危険なのは、強烈な日光で網膜が傷ついてしまうからですが、ブルーライトの光も、日光と同じような性質を持っているため、網膜を大変強く刺激します。

もうおわかりかもしれません。日光と同じように強烈なブルーライトを暗くなってからも浴び続けていると、体内時計が正確な外界の明るさを認識できず、おかしくなってしまうのです。ブルーライトはLEDを用いた照明や、テレビ、パソコン、スマートフォン、タブレットなどから多く発せられています。遅くまで残業でパソコンを見続けていたり、ベッドに入ってもスマートフォンを眺め続けていると、体内時計が狂って、メラトニンが分泌されなくなってしまいます。

照明を暗めにする

残業などの場合、個人では対策が立てづらいかもしれませんが、パソコンのディスプレイの照度を少し落とすだけでも、効果はあると言われています。

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また、夕方から夜にかけて、徐々に室内の照明を暗めにしていくと、体内時計が夜を認識しやすくなり、メラトニンの分泌が促されます。自然光と同じように、夕方には暖色系の照明を使うようにして、就寝時刻まで徐々に照度を下げていくと効果的です。就寝時刻の1時間ほど前になったら、最低限の照明以外は消して、睡眠に備えましょう。

Lesson 9-3 まとめ

  • メラトニン…起床から約15〜16時間後に分泌され眠気を促す。
  • 目に光が入ると、視交叉上核(体内時計)は朝が来たこと=覚醒したことを認識するので、起きたら日光を浴びるようにする。
  • 午前中に日光を30分以上浴び続けていると、その夜のメラトニンの分泌が増える。
  • ブルーライト…可視光線のなかでもっとも波長が短く強い光。角膜や水晶体では吸収・屈折されずに網膜まで届く。
  • ブルーライトを暗くなってからも浴び続けていると、体内時計が正確な外界の明るさを認識できず、メラトニンの分泌が減る。
  • 眠りに就く前は強い光を浴びない。
  • 夕方から夜にかけて、徐々に室内の照明を暗めにしていく。夕方には暖色系の照明を使うようにして、就寝時刻まで徐々に照度を下げていく。