Lesson 9-1 寝る前は眠らない

ちょっとした工夫

これまで、睡眠の仕組みや、睡眠が人にとって欠かせないものであることを見てきました。充分な睡眠が取れないと、日中の生活に支障が出たり、病気に繋がることもあることは、おわかり頂けたと思います。

それでは、実際に寝付きを良くしたり、睡眠の質を上げたりするにはどうすればいいのでしょうか。重度の不眠の場合は、もちろん早めに医師に診てもらうことが第一です。しかし、ちょっとした工夫で、睡眠を改善させることも充分できます。なるべく簡単にできる実践的な方法を、いくつか見ていきましょう。

今回は、寝付きを良くする方法です。

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就寝前の8時間は眠らない

眠れないのはつらいものです。もう眠ろうと思っても、なかなか寝付けない、眠気が来ない、そんな悩みを抱えている方は多いでしょう。

眠気は覚醒時の疲れ具合に比例して強くなります。日中、身体を動かしたり頭を使えば、そのぶん疲労もたまり、夜の眠気が強くなります。ここで重要なのが、就寝前のちょっとした空き時間に、うたたねをしてしまわないことです。たとえば、会社から電車で帰宅するときや、夕食後にテレビを見ているときなど、気がつくと数十分ばかり眠ってしまっていた…そんな経験はないでしょうか。短い昼寝にも疲労解消の効果があるのと同じように、方以降のうたたねも、せっかく溜まった疲労を多少なりとも解消してしまいます。その結果、いざ眠る時間になってベッドに入っても、なかなか眠気がやってこない…ということになります。

就寝前の8時間は、ちょっとしたうたたねを含めて、いっさい眠りをとらないことが効果的です。夜12時に就寝する場合は、夕方4時以降は眠らないようにします。疲れた帰りの電車では、つい眠くなってしまいがちですが、そこをグッとこらえて、座らずにいたり、本を読んで気を紛らわしましょう。夕食後にテレビなどを見るときは、軽いストレッチなどをすることで、うたたねしてしまうのを防ぎ、また運動のリラックス効果と疲労効果のおかげで、寝付きも睡眠の質も良くなります。

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ベッドサイドに本を置く

単純なようで意外と効果的なのが、眠る前に本を読むことです。自分のお気に入りの本を読めば、自然と頭がリラックスしてくるので、ストレスや緊張が強くて寝付けないときは、試してみると良いでしょう。

また、難しい内容の本を読むと眠気が来やすいことも知られています。退屈な会議や授業の最中、眠くなって困った経験は誰にでもあることでしょう。これには科学的な根拠があります。ヒトの身体は、不快な刺激を受けるとそれをやわらげるように出来ています。「難しい」「退屈だ」という感情も不快な刺激の一種なので、刺激をやわらげるためにβエンドルフィンという神経伝達物質が分泌され、眠気が引き起こされるのです。

面白くてついつい読み進めてしまうような本や、反対にあまりにも興味が沸かなかったり、嫌いな作者の本だったりすると、感情の刺激が強すぎて目が冴えてしまって逆効果です。こんな本がオススメ!とはなかなか言いづらいのですが、古典的な哲学書や科学書の類いを一冊、枕許に置いておけば、あるときは眠りの助けに、あるときは思わぬ勉強ができるかもしれません。

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Lesson 9-1

  • 眠気は覚醒時の疲れ具合に比例して強くなる。
  • 就寝前の8時間はいっさい眠りをとらない。
  • 軽いストレッチなどをして心身をリラックスさせる。
  • 難しい内容の本を読むと眠気が来やすい…βエンドルフィン(神経伝達物質)の効果。