Lesson 4-5 コリン作動性メカニズム

もうひとつのメカニズム

モノアミン作動性ニューロンからなるメカニズムは、大脳皮質全体に張り巡らされた軸索や、モノアミン系神経伝達物質に特有の発現効果によって、睡眠と覚醒を切り替えていました。では、コリン作動性ニューロンを中心としたメカニズムは、どのような働きをしているのでしょうか。

(アセチル)コリン作動性ニューロン

コリン作動性ニューロンは、正確にはコリンではなくアセチルコリンという神経伝達物質を使っています。アセチルコリンは、神経伝達物質のなかでももっとも初期に同定された物質です。末梢神経系や交感神経系などに広く分布しています。

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コリン作動性ニューロンは、脳幹の橋と呼ばれる部分にある外背側被蓋核(がいはいそくひがいかく)と、脚橋被蓋核(きゃくきょうひがいかく)と呼ばれる神経核にあります。モノアミン作動性ニューロンと同じように、脳のなかの広い範囲に影響を与えることができます。

コリン作動性ニューロンを主体としたメカニズムの働きは、それ単体で見るよりも、モノアミン作動性メカニズムの働きと一緒に見ていくほうが、よりわかりやすくなります。これらふたつのメカニズムは、その働きの組み合わせによって、覚醒、レム睡眠、ノンレム睡眠を切り替えていると考えられています。

コリン作動性メカニズムとレム睡眠

まず、覚醒時には、コリン作動性メカニズム、モノアミン作動性メカニズムともに活発に活動して、大脳皮質を賦活しています。

ノンレム睡眠時は、その反対に、コリン作動性メカニズム、モノアミン作動性メカニズムともに活動が低下します。これによって大脳皮質の活動も抑制されます。

ふたつのメカニズムが対照的な動きを見せるのが、レム睡眠時です。レム睡眠時には、モノアミン作動性メカニズムは、ノンレム睡眠時にも増して活動を低下し、ほとんど発火が見られないほどになります。いっぽうで、コリン作動性メカニズムは活動を活発化し、大脳皮質を賦活します。

ただし、その賦活する部位などは覚醒時とは異なります。モノアミン作動性メカニズムによる賦活も必要と考えられる前頭前野外背側部などは、やはり機能が低下したままです。

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さらに上位のシステム

モノアミン作動性メカニズムとコリン作動性メカニズムを切り替えたり、あるいは機能を抑制することによって、睡眠と覚醒はコントロールされています。そして、このふたつのメカニズムをコントロールしているのが、Lesson 4-1でもご紹介した視床下部です。次回は、視床下部が睡眠と覚醒を切り替えるシステムについて、もっと詳しく見ていきましょう。

Lesson 4-5 まとめ

  • コリン作動性ニューロン…アセチルコリンを神経伝達物質として用いる。脳幹の橋にある外背側被蓋核と、脚橋被蓋核と呼ばれる神経核に存在する。
  • コリン作動性メカニズムとモノアミン作動性メカニズムの組み合わせによって、覚醒、レム睡眠、ノンレム睡眠を切り替えている。
  • 覚醒時…コリン作動性メカニズム、モノアミン作動性メカニズムともに活発に活動。
  • ノンレム睡眠時…コリン作動性メカニズム、モノアミン作動性メカニズムともに活動が低下。
  • レム睡眠時…モノアミン作動性メカニズムは活動を低下、コリン作動性メカニズムは活動を活発化。