Lesson 2-5 四段階のノンレム睡眠

もうひとつの眠り

まず、前回学んだレム睡眠について、大切なポイントを簡単におさらいをしましょう。

  • レム睡眠中、脳から脊髄に向けて、運動ニューロンを麻痺させる信号が送られている。
  • レム睡眠中、自律神経系の活動は交感神経、副交感神経ともに大きく変動している。
  • レム睡眠中は骨格筋の緊張が解けている。

これらをまとめると、レム睡眠は身体を休ませるための睡眠であり、いわば身体の休息時間であることがよくわかります。では、もうひとつの睡眠、ノンレム睡眠の特徴や役割はどんなものなのか、探っていきましょう。

ノンレム睡眠は四段階

レム睡眠とは違い、ノンレム睡眠は睡眠の深さによって、大きく四段階に分類することが出来ます。睡眠の深さは、例によって睡眠ポリグラフ検査で調べます。

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脳波の周波数によって、睡眠の深さが測られます。脳波にはそれぞれ細かく名称がつけられています。「α(アルファ)波」などの言葉は耳にしたことがある方も多いでしょう。覚醒時に観察される脳波はβ波で、横になったり、目を閉じたりしてリラックスした状態になると、β波よりやや周波数の低いα波が観察されはじめます。やがてノンレム睡眠に入ると、α波よりさらに周波数の低いθ波が見られるようになります。このように、観察される脳波によってノンレム睡眠を分類していくと、次のようになります。

  • ノンレム睡眠 第一段階…α波が徐波化し、θ波が出現。
  • ノンレム睡眠 第二段階…紡錘波、K複合波が出現。
  • ノンレム睡眠 第三段階…2Hz以下のδ(デルタ)波が50%以下。
  • ノンレム睡眠 第四段階…δ波が50%以上。

脳波の名称が少々ややこしくて覚えにくいかもしれません。とりあえず、睡眠が始まってからノンレム睡眠の第四段階に至るまで、観察される脳波の周波数がどんどん低くなっていく、と覚えましょう。それぞれの波形は、上のポリグラフ波形で確認してみて下さい。個々に見ても特徴は掴みにくいので、波形の推移を、グラフ全体で大まかに捉えればよいと思います。

また、脳波の徐波化(振幅が大きく、周波数が少なくなる)が著しい第三段階と第四段階は、徐波睡眠(スローウェーブスリープ)と呼ばれます。いわばもっとも深い眠りの段階です。

電車で居眠りもノンレム睡眠

波形によって四段階に分類されたノンレム睡眠ですが、外見上はどのような変化を辿るのでしょうか。

面白いことに、私たちはノンレム睡眠の第一段階を、わざわざベッドに入らなくても経験しています。疲れて電車に揺られていると、うたたねをしてしまうことがあります。この、ほとんどの人が「うたたね」だと思っているものが、ノンレム睡眠の第一段階です。「まどろみ期」と呼ばれることもあります。第一段階でもノンレム睡眠の特徴はしっかりと現れています。つまり、姿勢を保っていられるという点です。レム睡眠では全身の筋肉から力が抜けてしまうため、このような眠り方をすることは出来ません。また、この「まどろみ期」に起こされた人の半分程度は、自分が寝ていたという認識がありません。「ただ目をつぶっていただけ」と答えます。確かにこの段階では、アナウンスを聞き逃して駅を乗り越してしまうこともありません。一般的な浅い睡眠のイメージそのものといってもいいでしょう。

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第二段階は「軽睡眠期」とも呼ばれ、眠りがやや深くなります。もう一度、電車に乗っている人に例えてみると、降りようと思っていた駅で起きられるかどうかが怪しくなります。ふっと気づくとドアが閉まっていた、降りる駅かどうか確かめようとしているうちに乗り越してしまった、そんな状態が第二段階の特徴です。首を保っていることが難しくなることもあります。この段階で起こされた人は、自分が眠っていたとはっきり認識しています。ノンレム睡眠の第二段階は、睡眠全体のうちの50%〜60%程度を占めています。

第三段階と第四段階は「深睡眠期」とも呼ばれます。別名の通り、非常に深い眠りです。一般的に言う熟睡はこの段階のことを指します。脳の機能が低下しているため、音に対する反応も鈍くなり、起こすためには大声で呼びかけたり、身体を揺すってあげなければいけません。電車の中で深睡眠期に到ってしまった人は、終点まで目を覚ますことはないでしょう。

脳の休息時間

ノンレム睡眠も深い段階になると、脳の機能が低下します。このことがノンレム睡眠の一番大きな特徴であり、レム睡眠とは対照的な点です。ノンレム睡眠は「脳の休息時間」なのです。次回はもう少し詳しく、脳の休息について見ていきましょう。

Lesson 2-5 まとめ

  • ノンレム睡眠は四段階に分けられる。眠りが深くなるにつれて、脳波の周波数はどんどん低くなっていく。
  • 第一段階はまどろみ期と呼ばれ、眠っているという自覚がないことも多い。
  • 第二段階は軽睡眠期と呼ばれ、睡眠全体の50%〜60%を占める。
  • 第三段階、第四段階は深睡眠期、徐波睡眠(スローウェーブスリープ)と呼ばれる。